いわゆる「アンチモンバッテリー」と呼ばれるものは現在でも使われているようですが、国産ではもうあまり見なくなりました。低コストで生産できるメリットはあるのですが、やはりスタートが鈍いのと液減りが早いのがつらいところ。自己放電も多く、バッテリー自体の寿命も極端に短い。手軽で便利が身上のバイクのバッテリーとしてはいまひとつと言いましょうか、現在ではバス・トラック・船舶用の大容量バッテリーでしかほとんど利用されていないようです。
バイクのバッテリーとして優秀な性能を認められているのが「カルシウムバッテリー」と呼ばれているタイプです。特にプラス・マイナス両方の極板にカルシウム合金を使用しているタイプは液減りも自己放電も少なく始動パワーも極めて高い強力なもので、フルカルシウムバッテリーとも呼ばれています。まさにバイクのバッテリーとして生まれてきたと言いたくなるような優れものなのです。松竹梅の松とでも言いましょうか。
バイクのバッテリーでは最近「ハイブリッドバッテリー」と呼ばれるものが出ています。これはフルカルシウムバッテリーの高性能とアンチモンバッテリーの手軽さを合わせたコストパフォーマンスの良さを狙った製品で、プラス側にアンチモン合金、マイナス側にのみカルシウム合金を使用しています。アンチモンバッテリーに比べると確かに寿命が長く、始動性にも優れています。安価な輸入もののバイクのバッテリーにはアンチモンバッテリーか、このハイブリッドバッテリーが多いようです。
より強力なメンテナンスフリーを目指して開発されたのが「シールドバッテリー」というタイプ。両極ともフルカルシウム合金を使用。密閉性のよい二重構造が特徴で、液漏れがほとんどありません。めんどうくさがりさんには実にありがたいバイクのバッテリーで、安全性の面でも二重丸。ただ、自分で補水できないわけですから、チェックを怠ると知らない間に電解液が蒸発して、ある日突然始動できなくなる、ということも。万一のためには予備のスターターキットを装備しておけばさらに安心です。
ちょっと出てきた「メンテナンスフリー」という言葉ですが、これを字義どおりに「点検無用」と解釈して、いちどバイクのバッテリーを積んだらほったらかしにしている人がいます。しかしこれはとんでもない誤解で、正確を期すなら「点検の手間が楽になります」とお考えください。そもそも自分が乗る愛車です。バイクのバッテリーだけでなく、レギュレーターやブレーキ、プラグにタイヤなど常に愛情を持ってお世話してあげてください。